小説「ストーカーの向うに自分がいた」…白く燃え、熱くアスファルトを焦がしていた太陽がようやく山の影に消え始める頃、広島市中区にある広島東警察署も昼間の業務を終えようとしていた。深夜ともなれば繁華街が近いこの警察署では、他の警察署と同様に不可解な事件が起こり、それなりの忙しさを味わう事になろうが、これから暫らくの時間帯に事件が起きる確立は少なく、署内は閑散としている。何人かの制服姿の警官が所在なさそうに自分の机に向かっている程度だ。
何処からともなく流れてくるラジオのニュースが、今日も最高気温は三十四度を越えたと、知らなくてもいい事実を伝えている。その為だろう、ぐるりと署内を見渡すと、どの警官も疲れた顔をしていて覇気を感じる事が出来ない、何とも頼りない限りだ。
その光景とは裏腹に、署の裏口から嬉々として出て行く数人の姿が伺えた。たぶん昼間の勤務を終え自宅に向かう警察官だろう、足早に去っていく。私服に着替えた彼等の表情は明るい。警官といえども職務を終えたら普通の人である、自宅で帰宅を待つ人がいるのか、それとも同僚と、居酒屋で一杯飲む約束をしているのかもしれない。
生活安全課に勤務する宇根忠雄巡査も通常勤務を終え、帰る事が許された警察官のひとりだった。彼も他の警官と同様、自宅にいる家族の事を頭に浮かべながら、嬉々として自宅に向かうはずだが、今日は少々足取りが重い。昨日は普段よりも警察署を訪れる人が多く、自宅に帰る事が出来なかったのだ。睡眠時間も自分の机で、うとうとと二時間ほど寝ただけであり、警察官として鍛えてなければ今日の勤務は覚束ない状態だっただろう……半そでシャツから伸びる。
― Copyright-Big Japan web dwyt.テンプレート=http://www.takumu.net/hp/ ― 文章にはすべて著作権があります
End of this pages.Next one.